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南北経済協力の行方

東京富士大学経営学客員教授 石田 賢 


 2018年の朝鮮半島は、南北協調に向けて根本的な変化が起こる兆しを見せ、世界が注目した1年であった。オリンピックなどスポーツや芸術などの文化交流から一歩踏み込み、本格的な南北経済交流への期待が高まりつつある。
 転機を迎えたのは2017年5月、韓国に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が就任し、北朝鮮に対話を呼びかけたことに始まる。文大統領が北朝鮮に平昌オリンピック(2018年2月)への参加を促し、スポーツを軸とした融和政策を推し進めた結果、金正恩(キム・ジョンウン)委員長もこれに応ずる姿勢に変化してきた。
 2018年4月と5月に板門店における南北首脳会談を皮切りに、6月にはシンガポールで初めての米朝首脳会談が開かれ、米国は北朝鮮の非核化に向けて核施設のリストの提出と核廃棄の行程表を求め、そして9月には3回目の南北首脳会談で「平壌共同宣言」合意書が交わされ、南北経済交流の拡大と協力が謳われた。
 こうした華々しい外交とは裏腹に韓国経済は沈滞感が漂う中、文在寅政権が前のめりになって推進している事業が、南北融和とその延長線上に北朝鮮を取り込む「北方ビジネス」である。
 韓国政府は、国連による対北朝鮮制裁の解除を経済協力の前提としているものの、北朝鮮へのインフラ投資、鉱物資源、消費者市場としての期待を膨らませ、今や過熱気味の言動を繰り返している。ここには北朝鮮の市場に中国東北3省、ロシアの沿海州まで含めれば、約2億人の人口を抱える巨大な単一市場への期待が込められている。

北方ビジネスにのめり込む韓国政府

 文在寅大統領が掲げている経済政策「Jノミクス」は、所得主導による成長、規制を緩和して新産業を育成する革新成長、財閥依存体質から脱却する公正経済の3つを軸にしている。文政権が掲げる「所得主導」による経済成長は、所得を引き上げることで需要を刺激し、成長の牽引力を引き出そうとする構想である。
 所得主導政策の目玉は、2018年度の最低賃金を16.4%引き上げ時給7,530ウオン、19年度は10.9%アップの8,350ウオン、加えて2018年7月1日より週68時間から週52時間勤務制(残業も含む)へと働き方改革にまで踏み込む内容である。
 一連の経済政策から1年半経つものの、韓国経済が活性化するような兆しは見当たらず、韓国銀行は、2018年7月に今年の経済成長率推定値を従来の3.0%から2.9%に引き下げ、2019年の予測値は2.7%へとさらに低下するとしている(図表1)。
 国民目線の親労働政策は、最低賃金の急激な引き上げ、非正社員の正社員転換などにより人件費の上昇を招き、企業家に雇用需要を減退させ、失業率上昇の主因になっている(図表2)。韓国企業は高い賃金から逃れるため、工場の海外移転への動きを強め、ベトナム、中国、米国、日本、インドなどで現地雇用を増やしている。
 韓国の産業を俯瞰すると、成長を牽引してきた自動車、鉄鋼、造船、石油化学なども沈滞する局面を迎え、生産・輸出で唯一活力をもたらしてきた半導体も価格下落傾向から、今や危機論がささやかれ始めている。
 こうした中でも「北方ビジネス」に対する韓国政府の考えは、国連による対北朝鮮制裁の解除を経済協力の前提としているものの、北朝鮮へのインフラ投資、鉱物資源の開発、消費市場としての期待を高らかに謳うばかりである。
 韓国財界も政府の意向に表面的には従う姿勢を貫いている。2018年9月の平壌(ピョンヤン)首脳会談特別随行団には、韓国から韓国経営者総協会の孫京植(ソン・ギョンシク)会長、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長、大韓商工会議所の朴容晩(パク・ヨンマン)会頭、LGグループの具光謨(ク・グァンモ)会長など、政・財界の大物53人が参加した。 

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北朝鮮の深刻なインフラ不足

 北朝鮮のインフラ整備については、各機関がさまざまな費用推計をしているが、いずれにしてもこれには天文学的な資金が必要となる。
 現地報道の中からいくつか列挙すると、韓国金融委員会は、2014年の「統一金融報告書」で北朝鮮インフラ開発に鉄道(773億ドル)と道路(374億ドル)で合計1,400億ドル、韓国交通研究院は、北朝鮮の鉄道網近代化に最大30年160兆ウオン、韓国建設産業研究院は、北朝鮮経済特区開発、エネルギー教育などインフラ投資に年間27兆ウオン、10年間に270兆ウオン、などと推計している。
 北朝鮮のインフラは、鉄道、道路、港湾、電力のどれをとっても劣悪な状態にある。
 まず鉄道から見ていくと、北朝鮮の鉄道網は総延長5,304km、主要路線は4本に過ぎず、基本的に単線となっており、全長のわずか2.9%しか複線化は実現していない。
 北朝鮮の道路も総延長は2万6,170kmであるが、韓国と比較して4分の1水準にとどまる。高速道路も平壌-開城(1992年竣工)、平壌-元山(1978年竣工)、平壌-香山観光道路(1995年竣工)などに限られ、総延長は729kmである(図表3)。これを国際標準の規格で整備するとなれば、1㎞当たり19.1億円(米国基準)とすると、既存の高速道路729㎞だけでも1兆3,924億円の整備費がかかる。

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 港湾施設も脆弱であり、韓国産業銀行が推計した北朝鮮の総荷役能力は2016年末基準4,157万tにすぎず、韓国11億4,000万tのわずか3.6%水準である。北朝鮮保有している船舶トン数も、韓国の4,460万 G/T(総トン数)に対して93万 G/Tと2.1%にとどまる。
 とくに西海に面した北朝鮮最大の貿易港・南浦(ナンポ)などの港湾では、干満差が大きく水深が浅いうえに、大同江(テドンガン)からの土砂が堆積しやすく、国際港とするには、浚渫から始めなければならない。
 日本海側の羅津(ラジン)、先峰(ソンボン)、清津(チョンジン)も埠頭面積が狭いうえ老朽化が激しく、日・韓・中と物流ネットワークを構築するには大きな障害である。なお羅津は3つの埠頭を持つものの、1号埠頭が中国企業、2号埠頭がスイス、3号埠頭がロシアに10~50年間の使用権が与えられている。
 さらに電力は致命的な状況にある。北朝鮮の電圧は、地域内では、3.3、6.6、11、22kVと複雑であり、地域間を融通するにも220・110KVと統一されていない。規格が標準化されなければ、送配電網の連結は不可能である。送配電網が整備された後、老朽化している発電所《北倉(プクチャン)火力発電所平壌(ピョンヤン)火力発電所、清川江(チョンチョンガン)火力発電所》などの近代化が必要である。
 また天然ガスについては、韓国ガス公社によると、工事は極東シベリアのガス田から採掘される天然ガスを、陸上配管を通じて、北朝鮮を経て韓国に供給する「南北露天然ガス事業団韓露PNG(パイプライン天然ガス)共同研究」のための実務準備に着手した段階である(図表4)。やはり実現までには相当の期間を要する。
 結論から言えば、北朝鮮のインフラ整備は、莫大な資金と長期的な計画を必要とすることから、まずは短期的かつ可能性の高い事業の実行により、北朝鮮に外貨をもたらすプロジェクトが火急の案件として浮上する。

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開城と金剛山が目先の資金源

 北朝鮮が本格的に改革開放へと動き出すかどうか重要な試金石は、金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地の再開がいつ実現するかである。これら2つのプロジェクトは、ある程度インフラが整い韓国企業も経験済みであることから、北緒戦にとって重要な外貨獲得源となる。
 北方ビジネスは財閥の中でも現代グループの動向が注目される。現代財閥の創業者・故・鄭周永(チョン・ジュヨン)氏が北朝鮮出身者であることはあまりに有名であり、北方ビジネスの展開は、現代グループにとって故・鄭周永名誉会長と故・鄭夢憲(チョン・モンホン)会長の遺志を継ぐことに他ならない。
 現代グループは2018年5月、南北経済協力タスクフォース(TF)チームを編成し、毎週会議を開いて現代グループ企業間の情報共有に努め、北朝鮮における事業再開に向けて検討を重ねている。
 現代グループ北朝鮮事業は、1998年11月に金剛山(クムガンサン)観光から始まった。しかし金剛山観光は2008年7月の観光客襲撃事件を発端に2014年から現在までストップしている。
 2018年11月が金剛山観光を開始してから20周年記念の節目に当たることから、韓国統一部から現代峨山(ヒョンデアサン/北朝鮮事業を担当する現代グループ企業)は訪北の承認を受け、北朝鮮・朝鮮アジア太平洋平和委員会(朝鮮労働党の外郭団体)と共同で、2018年11月18~19日に観光20周年南北共同行事が行われた。
 政界関係者を含む北朝鮮訪問団の規模は107人(うち現代グループ役職員30人)であった。一方の北朝鮮側からはアジア太平洋平和委員会と金剛山特区関係者など80人が参加した。
 なお現代グループ北朝鮮における電力、通信、鉄道、通川(トンチョン)飛行場、臨津江(イムジンガン)ダム、金剛山(クムガンサン)水資源、名勝地観光-白頭山(ペクトゥサン)観光など7つの社会間接資本(SOC)に対して、2030年までの独占事業権を保有している。このため、韓国財閥の中でも現代グループの具体的な動きが、北方ビジネスの成否を占う先行指標である。

経済協力の前提は統計整備

 韓国政府の言動とマスコミの報道は連日、北方ビジネスの可能性に沸き立っているが、過去を振り返る必要がある。
 1998年に金大中大統領の新政権発足後10年間、南北経済協力が活発な時期があった。この間サムスン(電話機の生産)、現代、大宇など財閥企業が北朝鮮と合作または合弁形態で工場を稼働したが、わずか数年で頓挫した。鉄鋼メーカー・ポスコ北朝鮮の石炭開発に乗り出したが、道路・鉄道・港湾などすべてのインフラ不足で、北朝鮮南浦(ナムポ)港から韓国の光陽(クァンヤン)港までの輸送に15日かかり、すぐに中断に追い込まれた。韓国企業の南北経済協力は、政府の圧力に逆らえず、これに準備不足も加わって失敗した苦い経験でしかない。
 こうした過去の失敗を払拭するには、まず北朝鮮の法整備(投資・税制・労働等)と併せて、正確な統計資料の整備が欠かせない。韓国銀行などの推定にとどまっている北朝鮮GDPはじめ、北朝鮮自身が正確な統計資料を揃えることが、経済協力の大前提である。
 北朝鮮の統計資料が整備されたた後、国際通貨基金(IMF)、世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの国際金融機関に北朝鮮が加入し承認を受けて後、案件ごとに事業評価が行われ、融資可否審査などの段階を踏まなければならない。

南北経済協力に山積する課題

 北朝鮮が国際金融機関に加盟できたとしても、乗り越えなければならない課題は山積している。
 第一に、国連安保理の制裁解除は、検証可能、不可逆的な非核化(CVID)が現実とならない限りあり得ない。国連安保理は2017年8月、北朝鮮との合作事業の新設・拡大を禁止する制裁案を決議し、同年9月と12月には北朝鮮への石油類の輸出を制限し、北朝鮮人労働者のビザ更新も禁止している。
 第二に、韓国政府は北朝鮮に対して鉄道・道路建設資材などこれまでに総額3兆5,000億㌆(約3,500億円)を借款形式で提供したが、2010年以降、北朝鮮はほかの協力事業とともに中断し未償還状態のままである。
 第三に、2016年2月に開城(ケソン)工業団地が突然閉鎖された前例から、韓国が北朝鮮との共同事業に安全性が確保できるかどうかである。
 これらの課題をクリアしインフラ整備に着手したとしても、そこから民間投資が本格化するまでには最低10年の時間がかかるとみなければならない。
しかも南北経済協力が、順調に拡大していくとは考えにくく、長期間にわたる紆余曲折を覚悟する必要がある。
北朝鮮は、大陸勢力と海洋勢力の緩衝地帯であるという立場を利用し、米中露を天秤にかけて漁夫の利を得てきた歴史を持つ。北朝鮮が問題解決にいつも大国を巻き込んできた過去を顧みると、今後の経済協力が軌道に乗るまでには、北朝鮮の手ごわい交渉術を予め覚悟しなければならないだろう。

【佐藤工業】2019年6月期連結業績予想は売上総利益で増益確保 IT投資、新技術開発進め、得意分野を広げる

 土木・建築の総合建設会社、佐藤工業(本店富山市、社長宮本雅文氏)の2019年6月期連結業績予想は、大型物件の受注強化で工期が長くなる傾向に加え、資材費や労務費の上昇懸念はあるが、国内、海外工事の生産性向上を図り、売上総利益率で前々期並み水準ながら、売上総利益124億円と18年6月期に比べ1.6%の増益を見込む。今後の見通しについて「IT投資や新技術開発を進め、高度の技術が求められる大型工事など得意分野広げ、品質ブランドを確立したい」(宮本社長)方針だ。

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(写真1)芝生機能を維持するため、地中の温度を制御するシステム「ソルコン」を採用した、ノエビアスタジアム神戸

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(写真2)シンガポール建築建設庁より「BCA AWARDS 2018」を受賞した、シンガポール・ベンクーレン駅。同国の地下鉄では最大深度、最大床面積の駅舎。現在も発進立坑から4本のシールドトンネルを3本同時に掘削する工事が進む。

 18年6月期は粗利益率8.6%に
 18年6月期単体の受注高は1,662億円で352億円増えた。内訳は、土木(701億円)で23%増、建築(949億円)で30%増といずれも大きく伸び、海外工事は273億円にとどまった。一方、売上高は1,255億円と6%減少、土木(561億円、△6%)、建築(684億円、△5%)、海外工事も189億円となり159億円減った。反面で大型工事中心に施工管理の改善、生産性の向上が奏功し、売上総利益率は8.6%(土木8.6%、建築8.5%)と前期比1.9ポイント向上した。営業利益は62%増益の34億円、経常利益も50%増益の36億円となり、配当は4円増配して1株10円とした。
 3カ年計画の最終年度になる19年6月期も堅調な業績が見込まれる。受注高こそ「技能職などの人手不足がひっ迫し、施工体制の基盤に応じて受注を絞り込む」(宮本社長)ため、単体で1,560億円と6.2%減少とみているが、売上高はリニア中央新幹線や大型建築など期をまたぐ工事の進捗で連結1,698億円、単体1,570億円とそれぞれ323億円、315億円の増収を見込んでいる。中でも伸びの大きいのは海外建築工事。単体で受注高470億円、売上高325億円としているがいずれも期全体の増収分に相当する。

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好調な海外物件、シンガポールでは外資系データセンター
 海外工事の好調は、シンガポールのIT投資と医療施設。シンガポールではクラウド向けデータセンターの大型施設が日系、外資を問わず次々と誕生、「日本を含む世界の大手クラウドサービス事業者が、アジア向けのサービスを地震の少ないシンガポールや香港のデータセンターから提供しているが、企業のクラウド利用が進むにつれ、IT投資そのものがクラウドを運用するデータセンターに集約されるだろう。当社は2016年に外資系のデータセンターを手掛けて以来、今期も大型物件を受注し同分野の実績をさらに重ねていきたい」(同社長)。
 また医療施設は日本の政府開発援助(ODA)案件として、ミャンマーマグウェイ市で計画されている「マグウェイ総合病院整備計画」の建設工事を単独受注。産科や婦人科、新生児ユニット、救急部門、手術部門などの機能が入る新棟を建設して、総合病院の老朽化や病床数不足などの解消と、医療サービスの向上につなげる整備事業。2020年4月に完成の予定。これを足掛かりに、2011年の民政化以降、積極的な市場開放政策を背景に急速な経済発展が期待されている同国での事業拡大を目指している。

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  (写真3)ミャンマーマグウェイ総合病院計画

 大型アリーナの受注増やす、3次元形状の複雑な形状の建物も

 国内工事でも官民協働事業による地方都市の再開発事業、全国的に建設計画が相次ぐ民間主導のアリーナプロジェクトなどで受注を増やしている。特にスポーツや大規模なイベントを開催できるアリーナは、初の民間運営型のゼビオアリーナ仙台をはじめ函館アリーナ(北海道函館市)、今年9月に完成した防災拠点としての機能を備えた、最大5,000人、災害時には約3,000人収容できる東北最大級の由利本荘防災公園アリーナ(秋田県由利本荘市)と立て続けにプロジェクトを手掛けてきた。最近では、ぴあが20年の完成を目指して横浜市みなとみらいに建設中の1万人収容のMMアリーナ(仮称)で設計施工を担う。
 施工技術の開発でも新工法やIT活用の取り込みを急ぐ。今年1月にオープンした「富士山世界遺産センター」(静岡県富士宮市)は、3次元形状という難易度の高い複雑な形状の建物にBMIを導入した同社初の施工だ。BMIは初期段階にバーチャルの建物を構築することで設計や施工のミスを減らすことが可能な手法で、同センターは、「逆さ富士」を表現した木格子が目を引くその特徴的な意匠で大きな注目を集めた。

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(写真4・5)逆さ富士と展示棟スロープ、富士山世界遺産センター・(静岡県富士宮市)、木格子の3次元局面を持つ特徴的な意匠で注目される外観。展示棟の1階から5階をつなぐらせん状のスロープを歩くと、静岡県の特色である海からの富士登山を疑似体験できる。タイムラプスの映像を見ながら全長193mのらせんスロープを歩くと、静岡県の特色である海からの富士登山を疑似体験できる。 

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(写真6=左)みなとみらいに、1万人収容できる2020年春完成予定の音楽アリーナ「ぴあMMアリーナ」(神奈川県) 

(写真7=右)防災拠点としての機能も備えた、由利本荘アリーナ(秋田県)

 国土交通省は、施工のあらゆる工程にICT技術を活用する「i-コンストラクション」を推進し、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させる方針を掲げている。同社は昨年に土木事業本部にICT推進部を設置。小型無人機「ドローン」による3次元測量、ICTに対応した最新型建機の導入やAI解析機を用いたコンクリート調査など、トンネル工事など現場の作業指導や技術開発などにICT技術を活用していく。

【ゴールドウイン】好業績に拍車、中期計画前倒しで上方修正

 ゴールドウイン(本店小矢部市、本社東京、社長西田明男氏、東京1部)の好業績に拍車がかかる。2018年9月中間連結決算は、売上高が前年同期比16.2%増の334億円、営業利益が2.2倍の31億円、経常利益76.8%増で、純利益は46.8%の増益だった。売上高は9期連続の増収、営業利益、経常利益ともに4期連続の増益となり上期の過去最高益を更新した。

 主力ブランド「ザ・ノース・フェイス」や「ヘリーハンセン」などのアウトドア事業の売り上げが同26.7%増の234億円と引き続き業績を牽引した。「エレッセ」「スピード」などアスレチック事業は4.4%減の73億円、ウインター事業は1.9%減の7億円に止まったが、「スポーツや健康への関心が高まり、機能ウエアの着用が春夏通じて日常化してきた」(西田社長)ことが追い風になっている。とくに、直営店やeコマース販売による自社で直接運営する自主管理売り上げの拡大、卸売り店舗の好調などで販売効率を上げ在庫リスクを大幅に軽減し、製造原価の低減が大きく奏功。営業利益率は前年同期の4.9%から9.4%と4.5ポイント改善し、収益を押し上げた。

 下期も秋冬商品を中心にアウトドアブランド事業の好調に加え、アスレチック事業の体制強化により営業利益率の改善が進み、2019年3月通期見通しを上方修正した。売上高は800億円と前期比13.6%の増収、営業・経常・純利益ともに2ケタの増益伸びを見込んでいる。17年3月期を初年度として掲げた中期経営計画(5年間)の数値目標は、18年3月期に営業・経常利益は3年前倒しで達成、売り上げでも2年前倒しで達成することになる。

 創業70周年を迎える2020年に向け基本方針を、「Goldwinをはじめオリジナルブランドの拡充とリテールを重点に置いた自主管理型ビジネスの強化などで収益構造を強固にし、積極的に海外での店舗展開を図りたい」(西田社長)とした。こうした方針のもと中期計画最終年度にあたる21年3月期には当初計画の売上高800億円から900億円に、営業利益を65億円から110億円、経常利益を73億円から115億円にそれぞれ上方修正した。そして19年3月期での予想ROE株主資本利益率)は18.0%、21年3月期でも15.0%以上が目標だ。

 またSpiber(本社山形県鶴岡市)と協業開発している新世代高機能素材「人工クモ糸繊維」による商品化について「第3世代に相当する技術レベルまで進んでいるが、事業化の確定には至っていない」(同)という。

 好業績を背景に株主配当も引き上げる。19年3月期から中間配当16円を実施、期末予想の37円と合せ53円とする。18年4月1日付で1株を2株に株式分割しており、分割前に換算すると前期の85円から106円に増配することになる。

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 売り上げを牽引しているのは「ザ・ノース・フェイス」や「ヘリーハンセン」などのアウトドアブランド事業。今期はさらに「ゴールドウインGoldwin)」、「ウールリッチ(Wool Rich)」などの新ブランドを加えて、マルチブランド戦略を強化する。中でも同社が半世紀以上にわたりスキーウエアで開発技術を積み上げてきた自前のオリジナルブランド「Goldwin」を、新しいライフスタイルに合ったカジュアルウエアへも積極展開する。

 

丸の内に自前ブランド「Goldwin」の旗艦店、南青山に「ウールリッチ」

 その第1弾が11月8日に東京・丸の内にオープンしたゴールドウイン初の直営旗艦店だ。

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  新店舗は「Goldwin Marunouchi  (ゴールドウイン 丸の内)」。丸の内のメインストリートである丸の内仲通りと皇居前広場に接し、11月8日に開業した丸の内二重橋ビル内の大型複合商業施設「二重橋スクエア」1階の路面店。東京駅から歩いて数分程度、日比谷駅二重橋前駅からも地下道で直結している。ゴアテックス3層素材を使用したスキージャケットや防水透湿性に優れナチュラルな風合いの素材で仕立てたフード付きコートなど、タウンユースも提案する。

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 また、米国ブランド「ウールリッチ(Woolrich)」の旗艦店を9月29日、東京メトロ表参道駅から徒歩約2分に立地する南青山に出店。ゴールドウインは、2017年にウールリッチの日本国内における事業展開に向けてウールリッチジャパンを設立。新たにゴールドウインがデザインなどを手掛けた機能性ウエアを日本発の企画としてスタートした。180年を超えるブランドの歴史の中で機能性、洗練されたデザインで変化を遂げてきた「ウールリッチ・ジョン・リッチ&ブロス(Woolrich John Rich & Bros.)」コレクションや実用的なワークウエア、アウトドアウエアを展開する。

 

【東亜薬品】発毛剤市場に19年ぶり初の後発品 アンファーから発売

 東亜薬品(本社富山市、社長中井敏郎氏)が美容・健康事業のアンファー(本社東京、代表取締役三山熊裕氏)と共同開発した発毛剤「スカルプD メディカルミノキ5」(商品名)が8月6日の発売以来、初動1カ月間で計画比約150%を達成し、その後も計画を大きく上回るペースで好調に推移している。

  「スカルプD メディカルミノキ5」は、一般用医薬品(第一類医薬品)における壮年性脱毛症の毛髪用剤として国内で唯一、発毛効果が認められている有効成分「ミノキシジル」を5%配合した発毛剤。ミノキシジル配合の発毛剤は大正製薬が「リアップ」を発売して以来、同社が発毛剤市場を独占してきたが、19年ぶりの初めての後発品だ。

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 保湿剤のグリセリンを配合し、しっとり感にこだわった処方で、酸化防止剤は不使用。これまで発毛剤の使用率が低かった20~30代の若年層のニーズを取り込んでいく。商品の容量は60㍉㍑で、価格は7,800円(税込み)。アンファーが販売元となり、製造は東亜薬品が担当する。

 ミノキシジル配合の発毛剤を商品化するには、血管への影響を確かめる臨床試験のほか、容器やパッケージでも厳しい審査をクリアする必要があり、東亜薬品は開発に「5年かかった」(中井淳専務)という。

 昨年10月に発売予定だったが、添付文書の一部の図の不備がわかり発売を延期していた経緯があり、今回の発売では容器の形状を当初のノズルから新開発のクッションラバーヘッドに変更し、頭皮にやさしく塗布できるようにした。発売にあわせてタレントの草彅剛、香取慎吾を起用した「スカルプDミノキ兄弟」篇のテレビCMでも話題を集めた。

 販売はアンファーの自社通販サイトやアマゾン、楽天市場などでネット販売するほか、マツモトキヨシの薬剤師のいる店頭で販売しており、11月6日現在約800店舗で取り扱っている。来年3月までの初年度20億円の販売目標を掲げ、店舗での扱いも2019 年までに全国 5,000 店まで増やす方針だ。

 一方、「メディカルミノキ5」の登場を契機に、同様の商品で市場参入をうかがう他社の動きも見逃せない。すでに年内にも発毛剤事業に参入する方針を発表しているロート製薬や、シオノケミカル、リョートーファインなどの名前があがっており、発毛剤市場の活性化とともに販売競争の激化も進みそうだ。

米中貿易戦争、県内企業への影響は?

 米中貿易の行方に暗雲が漂っている。トランプ米国大統領は中国の知的財産権侵害や国内産業保護を理由に、突出した経済成長を続け経済大国となった中国からの輸入に対して制裁関税を発動し、中国もまた報復関税を実施、米中双方による高関税をかけ合う貿易戦争の様相を呈しているからだ。日本の大きな貿易相手国であり、世界1、2位を競う2つの経済大国の対立は、日本企業をも巻き込み世界経済の失速ともなりかねない懸念をはらんでいる。

 これまでに米国は、米通商法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への高関税を賦課しており、それに続く制裁関税を7月に340億ドル、8月に160億ドル、総額500憶ドルに相当する約1,300品目の輸入品に対し、各25%の追加関税を課した。1,300品目の内訳には金属加工機や射出成型機、金型といった生産機械、化学品や医薬品、自動車や航空宇宙産業の部品などが含まれている。

 さらに9月には家具・家電、冷凍肉など身近な生活用品を含む2,000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を実施し、両国が年内に合意に至らなければ、二段構えで2019年1月1日から税率を25%に引き上げるとしている。

 これに対して、中国による対米制裁の対象は、米国産の輸出の6割を占める大豆のほか、アルミニウムのスクラップ製品、綿花、電気自動車(累計8品目)に25%、残りの120品目(ナッツ、ドライフルーツ、果物、ワイン、エタノール、シームレス鋼管、古紙・板紙など)に15%、さらに米国の中国市場への依存度が高い液化天然ガス、銅鉱のほか、木材、板ガラスなどに5〜10%、1,100億ドルに報復関税をかけた。

 2017年の米中貿易は、中国からアメリカへの5,056億ドルに対し、アメリカから中国へは1,539億ドルだから、課した追加関税は米国は中国から輸入した5,056億ドルの製品のおよそ半分、中国はアメリカからの輸入品の約7割に及ぶことになる。 影響と警戒感  こうした報復戦争の今後の推移によっては、米中に工場を持つ企業や輸出企業への影響が懸念される。

 たとえば、自動車やスマートフォン、家電製品などさまざまな製品の部品を作るのに欠かせない工作機械。その受注額は「景気の先行指標」といわれる。受注統計を集計する業界団体・日本工作機械工業会(日工会)が9月26日に発表した統計でみると、2017年度は日本メーカーの受注高が前年比38.1%増え、1兆7,803億円と過去最高を記録した。

 だが中国向け受注はそれまで前年同月比プラスを維持してきた「一般機械向け」(ロボットや建設機械など)がマイナスに転じた。8月の月次受注高1,404億円のうち、半分以上を占める外需が1年9カ月ぶりに前年同月を下回った。

 外需全体では4.6%減少し、中でも中国の落ち込みは今年3月で358億9,700万円だったものが、月を追って下降基調を続け7月に200億円を割り、8月で189億6,900万円と37.3%の大幅減少となった。

 ただ、中国からの工作機械受注の減少は、前年同期の伸び率が同プラス184.5%と急上昇した反動という側面も指摘されるが、懸念されているのは間接的な影響だ。中国の自動車や関連部品、半導体製造装置のメーカーが、輸入関税による米国への輸出減や、中国国内における景況感の悪化を見込み、工作機械をはじめとする設備投資への影響が徐々に現実なものになりつつあるともいえる。

中国に生産・販売拠点を置く富山県内企業への影響は

 自動車、機械、電子部品関連に繋がる県内企業は少なくない。

「影響が出始めるとすれば、今期の下期あたりからだろう」(釣谷宏行社長)と推測するのは、黄銅棒・線の国内トップメーカーのCKサンエツ(本社高岡市、東京1部)だ。黄銅棒・線はパソコンのコネクタ、自動車の計器、エアコン、携帯電話の充電部分、ガスコンロのバーナーヘッドなど先端産業から日用製品まで需要範囲は広く、中国、台湾に販売子会社を設立して海外にも販路を広げてきた。

 中でも自動車、電子製品の生産に力を入れる中国向けは「米中貿易の問題が出始めたころから、黄銅線を中心に前倒しで受注が急増し一時は休日返上で生産に追われた。それも今年6月にピークアウトを迎えた。駆け込み需要の反動がこれから出てくるとすれば、影響は避けられず、サプライチェーンの見直しとともに、他の地域に販路開拓を急ぎたい」とする。

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CKサンエツ 業績の推移

 中国に現地工場を持つ工業用樹脂加工メーカー2社の場合。中国の天津、上海、広州に工場があり、自動車・事務機部品を製造する樹脂加工メーカーの三光合成(本社南砺市、社長黒田健宗氏・東京一部)は「中国の3工場からの直接輸出はなく、受注から決済までいずれも日本本社で取りまとめており今の段階で影響はない。もともと現地生産・現地消費が前提の海外展開を図ってきたので、関税にかかわる問題が出たとしても軽微」とみている。

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光合成 業績の推移

 タカギセイコー(本社高岡市、社長八十島清吉氏・ジャスダック)は、上海市、佛山市、武漢市に工場を持ち、日系自動車の内装部品、パソコンの筐体を製造している。このうちパソコンの筐体は納品しているレノボが完成品にして世界各国に輸出している。また足元では燃費の良さで人気の高い日本車の売れ行き好調を背景に、新しく塗装ラインの増設計画を進めているが、「9月に発動された追加関税の影響がこれから先どう出てくるか」自動車メーカーの動向に大きく左右されるとして模様眺めの状態だ。

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タカギセイコー 業績の推移

 電子部品も追加関税の対象になった。ワイヤーハーネスで世界シェアトップの住友電装を受注先として、自動車用のコネクタやワイヤーハーネス(組み電線)を製造するファインプラス(本社滑川市、社長三宮悟治郎氏)は、恵州市、蘇州市に工場を構える。グローバル企業として事業展開する住友電装の成長とともに、受注拡大を続けているが、中国工場の製品は住友電装の米国向けだ。「追加関税の対象となったことで、住友電装は生産戦略を見直す検討に入っているようだ。主力生産地の変更を含めて検討されるだろう。それによって当社の方向も決まってくるのでないか」(三宮社長)とみている。

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ファインプラス 業績の推移

古紙・板紙も対象

 関税の引き上げ合戦は副資材のコストアップにつながる。古紙や板紙も米中の追加関税の対象になっており、日本国内の段ボール加工・板紙メーカーへの影響が懸念される。

 最大の古紙消費国である中国ではインターネット通販や輸出製品の伸びにより段ボール需要が急増を続け、これを受けて原料の古紙は圧倒的に不足し、日本をはじめ米国や欧州からの輸入で補ってきた。中でも日本の古紙は分別精度が高く、日本の国内古紙価格に比べて高値で輸出される。さらに中国政府は今年、「輸入廃棄物原料環境保護規制基準」を施行し環境規制基準を一段と強化したこともあって、日本からの輸入にシフトする傾向を強めている。

 日本国内でも景気回復基調のもとで需要が拡大、2017年(1〜12月)の国内段ボール生産量は前年比1.7%増え142億741万平方メートル(全国段ボール工業組合連合会)と引き続き前年を上回る伸びだった。だが古紙原料の需給タイトで日本国内の古紙価格も上昇し、国内段ボール原紙の約75%を占有するレンゴー王子ホールディングスなど大手が原紙価格を昨年相次いで値上げした。

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サクラパックス 業績の推移

 富山・石川・新潟3県を営業エリアに3事業所を展開しているダンボール生産の一貫メーカー、サクラパックス(本社富山市、社長橋本淳氏)は原紙の値上げに苦慮しながらも、生産量で前年比2.7%増を確保、業界の伸びを1ポイントも上回った。だが「キロ10円値上げされた昨年の分を製品価格に反映できていないうちに、11月1日以降の出荷分からさらにキロ8円の値上げが予定されている」。値上げ理由は、重油や石炭、都市ガスなどの燃料、薬品などの補助材料、物流経費などが大幅に上昇していること。収益環境の悪化は避けられないとみている。  

  トランプ大統領は今回の措置に中国が報復した場合、対中制裁第4ラウンドとして中国からの輸入品すべてに高関税を付加すると主張、自動車や機械などの部品に対しても高関税が課せられるため、中国経済の成長が貿易戦争によって鈍化するようなことになれば、日本にとって関税引き上げはこれまでに築いてきたサプライチェーン(供給網)の再構築を迫られるだけでなく、中国に生産拠点を設け、米国輸出への比率が大きい自動車・自動車部品、工業製品への打撃は大きい。11月の米中間選挙を控え、関税問題は国内外にどのように波及していくか。目が離せない。